スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

三郎ちゃん

注)仮名ですからね~。

その患者さんは76歳で胃癌の末期だった。

ちょっと認知症が入っていたが、とてもひょうきんなおじいちゃんで、皆から三郎ちゃんと呼ばれていた。
がん末期だというのに痛みを感じないのかいつもニコニコ。ひょうきんな事を言って看護師をよく笑わせてくれた。

三郎ちゃんが吐血したのは私の深夜勤務の時だった。
ドクターコールして止血剤の入った点滴の指示をもらい、安静を保つため膀胱に管を入れた。

「大丈夫?三郎ちゃん。痛くない?」と私は患者の目を覗き込んだ。

三郎ちゃんは私を見つめ返したが、もう意識が落ちて来ていて返事はなかった。三郎ちゃんはそのまま昏睡に入った。

その日の昼間、家に帰ってから寝つこうとすると重い石と石をぶつけあうようなドカッという音がうるさくて眠れない。何度も何度もその音は響いた。どこかで工事でもしているのかと部屋の窓を開けて耳を澄ましても音はしない。工事もやってる風ではない。

窓を閉めて再び寝ようとするとドガッと音がし始めた。私は廊下の方の窓に行ってみた。そうしたら後ろでドカッと聞こえた。振り向くと私の部屋。部屋に戻って音源を探す。すると部屋の真ん中で音がしているではないか。

これはもしや、ラップ音と呼ばれるものか?まあいいや。気にしないでおこう、疲れてるんだ。寝よう。ドカドカうるさかったが私は寝付いた。

すると左肩をトントンつつくものがある。トントントントン寝入りばなで私は目を覚ました。肩に何かぶつかっているのかな?肩に手をやってみても何も触れない。でもドカドカ音は続いていたし、左肩は寝ようとするとトントントントンつつく感触があって眠れない。

こんな悪戯をするのはもしや……「三郎ちゃん?」私は呼んでみた。すると、肩をつつく感触は消えた。でもドカッバキッという音が増した。うるさいな~。まあいい寝ようと私は眠った。

翌日から私は友人の結婚式で旅行に出た。ドカッバキッは旅行先までついてきた。友人の部屋で二人になった時、思いきりドカッバキッと。

「ちょっと、あんた、何連れてきたのさ?」と友人。

あら、聞こえるのね~。幻聴じゃなかったんだわ~とちょっと安心。実はかくかくしかじかで多分三郎ちゃんだと思うと説明。友人は笑い転げていた。

「どうすんの?」と友人。どうしようも憑きものが取れるまで仕方がないじゃないと二人で就寝。

翌日友人の結婚式。で終わって友人宅に戻るとドカッバキッという音が減じている。弱ってきている。三郎ちゃん、まだ昏睡状態なのかなあ?まあいいや。
私は翌朝で自宅に戻った。すると音がしなくなってるではないか。

ちょっと確認しておくかと職場に電話。「三郎ちゃんはどうなったか教えてくれる?」

「三郎ちゃんなら亡くなったよ。午前4時頃だったみたい」お礼を言って電話を置いた。

その晩からゆっくり眠れたのは言うまでもない。



関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。