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TPPについて


TPPとは環太平洋戦略的経済連携協定のことである。

これは貿易で課される関税を原則的に全て撤廃し、更に貿易をするのに邪魔とみなされたTPP参加国の習慣、文化、食の安全に必要な制度など、これら非関税障壁と呼ばれるものも取り払い貿易を活発にしようというものである。

内容としては、基本的に9割程度の品目の関税撤廃を主目的とするFTA(自由貿易協定)や関税撤廃と共に二国間の投資の活発化を目的としたEPA(経済連携協定)の究極的なものと言える。

元々はTPPは2006年のシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国によるP4協定がその発端だったが、2010年にアメリカが参加交渉に参加したことでその形態は大きく変わった。

一言で言えば、TPPはアメリカの草狩り場になったのである。

2010年にオバマ大統領が5年間で輸出倍増を掲げた通り、アメリカはリーマンショックによる不況からの脱出を輸出増により見い出そうとしており、TPP参加もその一環なのである。

なぜ輸出増での景気回復なのかというと、それはグローバルインバランスの是正のためでもあるからである。

リーマンショック前、日本や新興国はアメリカの住宅バブルによって発生した消費者の過剰な消費意欲を頼りにアメリカに対する輸出を拡大していった。

一方で内需による景気回復を実現していたアメリカの外国に対する輸出は減っており、貿易赤字は拡大し、結果的に経常収支も赤字と化した。

内需が旺盛で、経済が成長していた時はそれでもやっていけたが、サブプライムローン問題を発端としたリーマンショックでアメリカの景気はどん底に落ち、アメリカは世界経済を牽引するだけの力を喪失した。

現在はアメリカが経常赤字である一方で輸出を増やすドイツや中国などは経常黒字を計上しており、世界経済のバランス構造が偏重した状態である。

経常黒字を計上する国は主に対アメリカ輸出を増やすことで輸出そのものを増やしてきた。

しかし、繰り返しになるがそのアメリカの内需はリーマンショック前のものではなく、世界経済を牽引する力を失っている。

「米国の消費者は世界経済の成長のエンジンにはなれない」
(2010年10月1日の、米国国家経済会議のサマーズ委員長の発言)

「巨額の貿易黒字がある国は輸出への不健全な依存をやめて内需拡大策をとるべきだ。いかなる国も、米国に輸出さえすれば経済的に繁栄できると考えるべきではない。」
(2010年11月のオバマ大統領の発言)



こういった発言をアメリカ政府の要人がしているのだから、アメリカが輸入を増やすつもりは毛頭ない。

となるとアメリカに代わる世界経済の牽引役が現れるのが適当だが、そんな国はないし、中国やドイツなども輸出を減らすつもりはない。

そこでアメリカはこのグローバルインバランスをなおすために下火になった内需ではなく、外需によって経済の再生を図るために輸出の拡大を目指しているのである。

そしてアメリカはTPPに参加した。

だが、現在TPPに参加している国は先ほどのアメリカとP4以外ではオーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアであり、どれも経済的に小国と言わざるをえず、輸出による経済再生を目指すアメリカにはこれらの市場はあまり魅力的ではない。

そこで経済大国である日本をTPPに参加させようと画策してきたのである。

アメリカは日本の安全保障を担っているので、当時は中国に対して人民元の切り上げを要求し、これを実現させるよりかは日本をTPP交渉に参加させる方が簡単だから尚更と言える。

以上がアメリカがTPPに参加し、日本をTPPに誘っている理由である。

そんな中、日本では野田内閣や輸出で稼ぐ大企業を中心にTPP交渉への参加が進められている。

当初参加派のマスメディアはTPPを貿易で稼げる企業と、関税撤廃によって損をする農家という視点で、企業vs農家という報じ方をしていた。

更に、参加派のマスメディア一部は「TPPでアジアの成長力を取り込む」などといまだに主張するが、 TPPに参加する国々の国内総生産を見てみると、日本とアメリカでTPP参加国全体の8~9割を占めているので、アジアの成長力を取り込むというのは虚構でしかない。



またTPPはあらゆる分野の関税、非関税障壁を対象にしているが、参加派のマスメディアが全体像をつかみ報道していたとは言い難い。

交渉参加国を見てみるとTPPに参加する日本とシンガポール以外の国は農産品輸出国であり、外需依存度が低い国は日本以外だとアメリカしかない。

となるといざ交渉となっても、日本が有利な展開を作り出せることは考えにくい。

また、TPPはあらゆる分野を対象にしているだけでなく、ISD条項、ラチェット規定というとんでもない内容が盛り込まれている。

ISD条項というのは、FTA、EPA、またはそれ以外の投資協定などを結んだ際に、その協定を結んだ国の間で適用される投資家や企業を保護するためのものである。

更に具体的に言うと、自国と投資協定を結んだ外国でその外国政府の横暴で投資した資金が回収できない場合に、投資家や企業がその外国政府に対して損害賠償を求める裁判を国際投資紛争仲裁センターで起こすことができる、というものである。

これらは本来、法制度や法の適用がしっかりしていない発展途上国に先進国が投資するときの保険のような役割を果たすものであった。

しかし、明らかにアメリカは、ISDをそれとは別の目的で利用している。

実例をいくつか挙げると、アメリカが北米自由貿易協定NAFTAを結んだカナダとの案件では、アメリカの廃棄物処理企業がカナダからアメリカにPCBという廃棄物を輸送してリサイクルしようとした時に、カナダ政府が輸送時にそれが漏れ環境汚染するのを恐れ、これを禁止した。

するとアメリカの廃棄物処理企業がISDを利用しカナダ政府を提訴した。

最終的に、カナダ政府はその企業に823万ドル(日本円で6億5840万円)を支払うこととなってしまった。

また、同じくNAFTAに加盟するメキシコでも、メキシコに展開していたアメリカ企業がメキシコのある所に工場を建て、その影響で地下水が汚染されたために工場の認可を取り消されたことに憤慨したそのアメリカ企業がメキシコ政府を訴え、メキシコ政府はその企業に1670万ドル(日本円で13億3670万円)を支払うことになった。

金額的に最もひどいのがアルゼンチンとの件である。

アルゼンチンもアメリカと投資協定を結んでおり、アジェリというアメリカ企業が1999年にアルゼンチンの自治体で30年間の水道事業を開始した。

しかし、アジェリはろくに水を供給しないばかりか、蛇口から水が出ても水からバクテリアが検出されてしまうなど、住民の健康を脅かすまでに問題は大きくなった。

そこでアルゼンチンの地方政府は2001年にアジェリとの契約を解除した。

しかし、アジェリは投資協定に盛り込まれていたISDの制度を使いアルゼンチン政府を提訴。

結局2006年にアルゼンチン政府はアジェリに対して、1億6500万ドル(日本円にして132億円)を支払う羽目になったのである。

ISDについて3つの例を挙げたが、これらで共通するのは賠償金を支払わされた国々は国民の安全や国の環境を守るため、言い方を変えれば普通に必要な法的措置をとっただけということである。

しかし、ISDの制度では基本的に投資家や企業の視点で理不尽かどうかを判断するので、政府が悪くなくても企業へ賠償金を支払わされるというケースが続発している。

しかも、行われる裁判の内容は非公開で控訴も不可能。

TPPでは、P4協定の段階ではこのISDはなかったが、アメリカが参加するとアメリカがそれを入れた。

アメリカによるISDの利用の仕方、何がなんでもISDを協定に入れようとするアメリカの姿勢を見れば、TPPを進めるアメリカの狙いの一つがここにあると分かる。

そんな本来の目的を忘れた姿に変わってしまったISDについて、野田総理は昨年11月の参院予算委員会で自民党の佐藤ゆかり議員に問われ、「詳しくは知らない」など言うのだから呆れるしかない。

ラチェット規定は、一部の例外を除いて、TPP交渉で決定した内容がどんなに都合の悪いものでも二度と変えられないというものである。

TPPと状況が類似した、米韓FTAというものがある。

韓国がアメリカと結んだ米韓FTAには、ISDも入っており、ラチェット規定も盛り込まれている。

それ以外にも米韓FTAでは、

◆今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米国にも同様のものを適用しなければならない(未来最恵国待遇)

◆自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米国企業が判断した場合、米国の自動車輸入関税は復活する。

◆ISDでの裁判は韓国で裁判を行わず、米国で行う。

◆米国企業が期待していたFTAによる利益が得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても米国政府が米国企業の代わりに国際機関に対して韓国を提訴できる。

◆韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要がある。

◆米国企業・米国人に対しては韓国の法律より米韓FTAを優先しなければならない。

◆韓国の知的財産権を米国が直接規制し、米国企業が、韓国のウェブサイトを閉鎖することも可能。

◆韓国の排ガス規制は、米国車には適用されない。

◆韓国の農漁協の共済、郵便局が手掛ける簡保の廃止。(米国の保険会社への配慮)

などがある。

更に、

◆スナップバック条項

韓国が米韓FTAに反した行為をとった場合は廃止されたアメリカ側の関税が復活する。

◆農産物に対する特別セーフガード(緊急輸入制限権)の自動発動基準の引き上げ

などもあり、米韓FTAは韓国の国民にとっては悪夢のものとなったが、韓国与党はこれを結んだ。

韓国は一時的にはウォン安の助けもあり輸出が好調になるかもしれないが、その一方で徐々に未来最恵国待遇など、上記したものが効力を発揮しだしてもがき苦しむことになる。

アメリカのUSTR代表は「TPPで日本には、米韓FTA以上のものを求める」とまで言っている。

韓国に対しこれだけの実績をあげたアメリカ当人がここまで言うのだから、TPPがどれだけ危ないものかというのは想像に難くない。

それでも参加派は「交渉で勝てばいい」などと言う。

しかし、日本政府がアメリカと行っている事前協議ではアメリカ側から牛肉、自動車、郵貯・簡保についての具体的な要求はあるのに、日本からこういう要求をしたという話は出てきていない。

TPPは早ければ秋にも妥結してしまう。

日本が仮に今すぐ交渉参加を決定したとしても、アメリカ国内での手続きに90日程かかるため、日本が交渉に参加できるのは夏頃。

その頃には、TPPで話し合われている内容のほとんどが決まっていて、途中から遅れて参加した日本が主導したり、意見を言えるものは皆無に等しい。

最初の方で主張したように利害が一致しない国々に囲いこまれて終わりという可能性が高い。

残念ながら、今までの事前協議での姿勢、TPPに参加する国々の国情を考えれば、日本が交渉で勝てる見込みは低い。

P4協定をベースとして柔軟性がない、つまり日本側の主張がほとんどできないTPPの参加には反対しているが、ゼロベースからお互いの損得を議論しながら結べる自由貿易協定(FTA)などに反対しているわけではない。

ただ、日本は外需依存度が韓国などに比べて低いという事実があるため、これまでの外需依存政策、引いては貿易政策のあり方を一度見つめ直してみる必要性は高いかもしれない。

いずれにせよ、日本がTPPに参加すべきでないという考えは今も昔も変わらず、これからも変えるつもりは一切ない。
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